魅力あるところに人は集まるを考える

 最近の新聞や受験雑誌などをみると、大学の存続が本当に可能か否かについて論じられていることがよくあります。実際に、今春の大学入試では、4年制の私立大学の約47%が定員割れを起こしていたと報じられていました。18歳人口が極端に減少し、来春の入試では121万人となって、その後、約10年間は約120万人で推移するとのことです。僕らが大学入試を受験した今から40年前は、戦後の「生めよ増やせよ」の時代であったために、18歳人口が約205万人もいました。この状況に加えて、大学数も今よりかなり少なかったり、また東大紛争で代表される大学紛争で入試が実施されなかったりで、どこの大学も競争率が激しく、大学入試を突破すること自体にたいへんな苦労が伴ったものです。

 こうした厳しい状況を経験した僕は、今日の大学入試のあり方や激しい学生争奪戦が異様に映ってなりません。しかし、現状を直視したとき、大学が将来にわたって生き残るためにはどのようなストラテジーがあるのだろうかを真剣に考えるようになりました。大学が未来永劫、生き残るために大切なことは「大学に魅力があるかどうか」にかかっているに決まっています。けれど、その魅力をいかに教員が世の中に出していったらよいのかがあまり問われてこなかったように思います。ここが大きな問題なのです。

 

 最近、大学の教授や准教授あるいは専任教員は、受験生を確保するために高校を訪問したり大学を直接知ってもらうためにオープンキャンパスを開催して高校生に対応しています。大学教員は受験生を確保するために大忙しで奔走しているのです。僕も大学の広報活動の一環として新しい学部の設立当初から埼玉県の高校を直接訪問して進学指導の先生にお会いし受験生へのアピールを御願いしてきました。僕は現在、受験生を増やすためのセールスマンになっています。こうした広報活動がどれだけ効果があるのかはまだ不明ですが、少なくても新しく設置された大学を知ってもらうことには波及効果があると感じるようになりました。

 

 一般的な観点で大学が生き残るための要素は、有名な大学がもつブランド性、交通の便が良いという利便性、そして文系と理系が混在して複数の学科がある総合大学であるという3つが指摘されています。この視点でみると、生き残れる大学は当然限られてくるでしょう。では、こうした要素をもたない大学はいったいどのような方法を講じることによって生き残れるのでしょうか。僕は、大学の魅力を教員自身の社会的な活動によって引き出すことができると考えています。もちろん、現実的には、受験生の目にプラスと映る設備や食堂あるいはトイレを改修してハード面での充実化を図ることも若者にとっては重要な要因になっているのも事実です。

 

 さて今日、本当に大切なことは、各教員が大学の存在意義をもっと真剣に問うことです。大学は元来、「知を発信する場所」であるからこそ、教員は学際的な研究活動に専念して新たな発見をしたり、加えて学生の心に響く興味深い講義を提供する姿を見せることが重要であると僕は考えています。最初は苦しくても、ここで学んで良かったという気持ちが学生に生まれてこれば、卒業後の大学への評価も高まり、結果的には受験生が増加するものなのです。物事には、入口、中身、出口の3段階がありますが、大学の真の魅力は中身にあると思います。「魅力あるところに受験生が集まる」を今こそ再認識して、教員は真剣に誠実に学生のために何ができるかを考えることが大切であると思う1日でした。

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