中国の長春市を訪問して

 僕は9月16日から20日まで中国・東北部にある吉林省の長春市を訪問してきました。長春はこの省の省都であり、1932年に旧日本軍の傀儡国家であった満州国の首都でもありました。かつての満州国の宮廷である偽皇宮は、清王朝の最後の皇帝であった溥儀がここで即位したことで有名でもあります。当時、満州国によって建造された官庁や旧日本軍の建物は、まだその多くが残っていて、現在は吉林大学図書館や基礎研究所、あるいは吉林省の共産党委員会の建物として利用されていました。

長春中医薬大学の新しいキャンパスの一部.jpg

 さて、この長春市にある長春中医薬大学は、今年で創立50周年を迎え、その記念式典が盛大に催されたのです。実は2000年に初めてこの大学を訪問したのですが、以来、僕はこの大学出身の先生と抗がん漢方薬の研究を協同で行ってきた経緯があり、これがご縁で大学長や書記長、あるいは病院長とも親しくして頂いたり、客員教授の称号を授与して頂きました。今回の訪問は4回目になります。2年前の訪問時よりも、道路や交通信号が整備されると同時に、町全体がとてもクリーンになっていたのがたいへん印象的でした。また、車も日本の新車が目立ち、発展の真っ直中にあることを痛感しました。

 

 記念式典に先立ち、大学では「21世紀の人類と健康フォーラム」と題してのシンポジウムが開催され、僕も「Music therapy and health maintenance」と題しての講演をする機会に恵まれました。多くの先生方に、音楽療法の意義を理解してもらい、効果的な音楽による聴覚刺激によって自律神経が整うことをお話しました。21世紀は「未病を治す」ことが最大の課題になっています。この「治未病」、つまり病気になる手前で健康に戻すことが、現在、もっとも大きな関心事になっているのは周知の通りです。この治未病を実践するためには、簡単で安価、そして副作用がなく継続性のあるツールを提供することが肝要です。この4つの条件を満たす効果的な方法として、音楽療法はもっとも簡単に導入できるタイプの一つと僕は考えています。このシンポジウムで伺った多くの先生方の研究成果はたいへん意義深く、将来、健康維持に活用できる内容を多く含んでいました。

 
大学創立50周年記念式典の模様.jpg

 創立50周年記念式典が開催された9月19日は、心地よい晴天に恵まれ、雲一つ無い青空が長春市いっぱいに広がっていました。会場となった大学のグラウンドには、およそ5000人の学生が整然と椅子に座っていました。赤や白の運動帽子をかぶった学生の毅然とした態度に、僕はおよそ45年以上も前の小中学校時代の姿を重ねていました。懐かしい郷愁を誘う光景でもありました。学長や書記長、他大学の学長の式辞に続き、祝砲や爆竹、そして平和の使者であるハトの放鳥などがあり、本当に心に残る素晴らしい記念式典でありました。お招き頂いた大学の外事部の方々や学長先生に心から感謝しています。

 
満州の大地に沈む大きく輝く太陽.jpg

 さて、長春から日本への直行便が、曜日によっては運航されていないという理由で、今回は黒竜江省の省都であるハルピンの空港から帰国の途につきました。長春から約250キロ離れたハルピンまでは、高速道を利用してもバスで3時間の行程でしたが、途中、満州の大地に沈む真っ赤な太陽はとても美しく輝き、今でも僕の心に焼き付いています。満州の大地にはまた、トウモロコシ畑がどこまでも一面に広がっていました。

 

 中国は今、ものすごい早さで近代化していますが、今回の旅で感じた長春の人々の温かさや優しさ、あるいは穏やかさが以前と変わっていないことに安堵するとともに、いつまでもこうした温かい人間性が維持されることを心から祈る旅にもなりました。

 

 長春中医薬大学の皆様、本当に有り難う。

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