日本人が解明した研究の成果を心から喜ぶ

 今週はスウエーデン王立科学アカデミーからビッグで嬉しいニュースが2つもありました。なんと、2008年度のノーベル物理学賞とノーベル化学賞が日本人が発表した研究の成果に贈られたのです。まるで自分が受賞したかのように、嬉しい幸福な知らせでした。受賞された4人の先生方に心からお祝いの言葉を送りたいと思います。

 僕は物理学が苦手であり、今回のノーベル物理学賞の対象になった研究の内容を理解することがなかなかできませんが、その研究対象は、物質をさらに細かくした先にある素粒子でした。物質の究極とは何かを解明する中で、粒子と反対の電荷もつ反粒子が存在し、粒子とその反粒子が出会うと、光になって消滅するということを解明したのです。この理論では、今日、なぜ粒子は存在するのに反粒子が現実的には存在しないかを説明することはできなかったのです。

 

 というのは、およそ今から137億年も前に宇宙がビッグバンで誕生したときには、粒子と反粒子が半々同じ数だけあったと考えられていますが、実際は反粒子がほとんど存在していないのです。これをうまく説明する理論として、粒子と反粒子にはわずかな差があり、つまり両者は完全に対称ではないという現象(対称性の破れ)があるために、宇宙が成長するにともない、反粒子は消えてしまうことが多かったというのです。そして、この破れは、少なくても基本粒子クオークが6種類あると、発生することが理論的に明らかにされたのです。これがノーベル物理学賞受賞の対象になっていました。

 

 一方、ノーベル化学賞の対象になったのは、オワンクラゲがもつ緑色蛍光蛋白質の発見と精製に対してでした。春から夏にかけて、日本海で普通に見られるオワンクラゲは、外界からの刺激で、身体の縁が緑色に発光する性質がありますが、この発光物質の実体解明を行い、この発光物質がホタルのルシフェリン・ルシフェラーゼによる発光のしくみとは異なり、紫外線を当てるだけで緑色に光る蛍光物質を含んでいたのです。この緑色蛍光蛋白質は今日、医学や生命科学の分野で幅広く日常的に使用されていますが、その理由は、この緑色蛍光蛋白質をある細胞の特定の蛋白質に結合させてやれば、その細胞がどこにいて何を行っているか、あるいはいつどこで死ぬかなどがわかるからでした。

 

 さて、自然科学は謎解きへの挑戦でもあります。不思議な自然現象に対して「どうして」を発する純粋で柔軟な感性をもちながら、根気よく地道な実験を重ねていくものです。このプロセスから、仮説が実証されたり、新たな発見があるものです。僕自身もこれまでに、「アゲハチョウ属種間雑種の研究」で文部大臣賞を、また「昆虫の生体防御反応に関する一連の研究」で日本応用動物昆虫学会賞を図らずも受賞してきましたが、今回のビッグな世界的ニュースは僕の科学的探究心と好奇心を改めて刺激してくれました。有り難いことと感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 今日、若者の理科離れが叫ばれていますが、未知を科学することは本来、基本的に楽しいものです。研究心を養うことはむずかしいかもしれませんが、身近な生活の中で不思議だなと感じる心があれば、その不思議さを解明しようという研究心は自然と培われていくものです。今回のノーベル賞受賞は、日本人の根気よく一つの謎解きに挑戦する不屈の魂のすばらしさを示してくれていたようにも感じました。

 

 ノーベル物理学賞受賞の南部陽一郎先生、小林誠先生、益川敏英先生、そしてノーベル化学賞受賞の下村脩先生に、もう一度大きな祝福の拍手を送ると同時に、長年にわたる粘り強い地道な研究活動に対して心からの敬意を表したいと思います。

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