癌の増加を日々憂う

 僕は長い間、なぜ正常に機能している細胞が、ある日突然、暴走して無限に増殖していくのかが理解できないでいました。というのは、生物学の知識では、例えば、傷が生じて、その傷口が新しい細胞によって治癒すると、もう傷口の細胞の分裂はストップして、無限には増殖しないからです。そして、「なぜ正常細胞は分裂をストップできるのか」、そのメカニズムが解明でき、そこに関与する因子が判明すれば、癌細胞などの無限に増殖した細胞の増殖を人為的にストップできるのではないかと常々考えていました。

 さて、今日、日本では癌患者の数が急激に増えています。これは国民にとって大きな問題なのです。一般的に、癌の発症には、精神的・肉体的な不快なストレスや食品添加物などの発癌物質、あるいはタバコや放射線、紫外線などが深く関与していると言われています。特に、不快なストレスが生活の中で継続すると、自律神経の一種である交感神経が優位に作動するために、免疫細胞である顆粒球という白血球が増加し、これに伴い異物を殺菌する活性酸素も同時に増えてきます。この結果、活性酸素や発癌物質などによって、正常細胞の遺伝子に傷がついて、細胞が突然変異を起こしてくるのです。

 

 こうした段階で、過剰の塩分やウイルスなどが存在すると、その影響で癌細胞の増殖がさらに促進してきます。こうしたプロセスを経て、癌細胞はさらに悪性化していくと同時に、自分で毛細血管をつくりながら周辺の組織へと居場所を拡大していきます。この延長線上では、血管やリンパ管を介して移動し、体内のあちこちに転移していく状態が出てきます。そして、癌細胞は何年もかかって、豆粒くらいの大きさになるため、検診で発見される割合が高まってくるのです。 こうした癌細胞の成長過程を考えると、癌の発生を食い止める予防策がいろいろと浮かんで参ります。喫煙をやめたり、紫外線や放射線に浴びないようにすることは、最初の予防策になるでしょう。また、食品添加物や種々の化学物質あるいは過剰な塩分を摂取しないように心がけることも大切です。さらに、日々の生活の中で生じる不快なストレスをいち早く解消することは、活性酸素を減少させる上で肝要になります。

 

 一方、僕の研究分野である免疫学の見地から癌細胞の発生を阻止する方法を考えてみると、癌細胞を撃退するNK細胞やキラーTリンパ球という免疫細胞をいかに元気づけるかが重要な問題になります。この方法は、一般的には、「癌の免疫療法」になりますが、癌患者さんのこうした免疫細胞の働きが低下している状態を考えると、免疫療法はその他の癌の治療法とともに重要な方法の一つになってきます。

 

 このような背景の中で、癌を発症させないようにするために、僕は最近、多くの方々に次のことを勧めています。それは、

 

1)十分な休息をとり、過労や心労を避けること

2)薬の長期服用を避け、身体への緊張度を和らげること

3)心身をリラックス状態に導く副交感神経の機能を高め、リンパ球を元気づけること

4)活性酸素を無毒化するニンニクや緑茶、ニンジン、ビタミンEなどを摂取することや、免疫力を向上させるキノコ類やバナナ、あるいは海藻類や乳酸菌、キャベツ等の淡黄色野菜をより多く心がけて摂ってほしいこと

 

などです。

 

 癌細胞はもとを正せば自分の細胞なのです。この細胞が暴走しないように、僕は穏やかな気持ちで癌細胞に御願いするのです。「日々の生活習慣や食生活を見直すので、もうこれ以上の暴走はやめて、どうか正常細胞に戻ってください」と。

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