ウエルネスを再考する会に参加して

 僕は先日、金沢医科大学で開催された第7回の「音楽とウエルネスの学際的融合に関する研究会」で幸いにも講演する機会に恵まれました。今日、人々は、一生涯を健康の中で全うしたいと願っていることは周知の事実です。したがって、この健康な状態をいかに持続させていくかが、社会の大きなテーマにもなっています。僕自身は、その健康な状態を持続させていく身体の有様あるいは健康に優しい生活環境そのものを「ウエルネスな状態」と考えています。この研究会では、社会とウエルネスについて考察することができ、たいへん意義のある参加となりました。

 このウエルネスは今日、身の回りの不快な精神的ストレスや嫌な人間関係などによってかなり低下し、多くの人に、不快感やイライラ感あるいは、食欲不振やホルモンのアンバランス、不眠、肩こり、頭痛など、いわゆる不定愁訴な症状を引き起こしています。一方で、自律神経のレベルでは、身体を活動状態に導く交感神経が優位に作動するために、免疫学的に顆粒球が増加して異物を殺菌する活性酸素までも増やしています。このことが、遺伝子に傷をつけて発癌の確率を高めたり、血管や消化管の壁にダメージを与えて、動脈硬化や潰瘍を発生させているといえます。さらに、ウイルスや癌細胞を攻撃するリンパ球の機能が低下するために、ウイルス感染症や癌の発生が増加しています。

 

 このように、多くの現代人は、多かれ少なかれ、種々の生活習慣に起因する不定愁訴に悩まされているので、決してウエルネスの状態にあるとはいえません。したがって、この観点では、「こうした半健康な状態、つまり未病の状態をいかに改善させて健康に導いたら良いのか」を真剣に問わなければならない時代になってきました。

 

 さて、僕はウエルネスを得るためには、未病を誘発するような悪い生活習慣や食生活を正すことが、まずもって必要であると考えています。さらに、未病を克服してウエルネスに近づくためには、いわゆる「治未病」の観点から、食事指導や節酒、禁煙、運動などはもちろんのこと、漢方や鍼灸、健康食品の活用が重要と思っています。これらに加えて、身近に活用できる有効な音楽療法も治未病において大きな役割を果たすものと思います。

 

 毎日どなたでも活用できる音楽療法は、簡単で安価ですし、感動力もあります。コストが安いという長所によって毎日持続も可能です。将来、音楽療法は、予防医学的には、健康状態を持続させる上で重要であり、また未病医学的には、未病の状態を改善させる手段にもなります。一方それは、治療医学的には、患者さんの症状に合わせた方法で病気の症状を緩和させたり改善する方法の一つとして位置づけられると思います。

 

 ところで、「温故知新」ということわざがありますが、僕は最近、ウエルネスを維持させる上では、温故知新ではなく「温故創新」であるべきと考えるようになりました。「古きをたずね新しきを知る以上に、新しいものを創ること」が大切と思うのです。温故知新の観点では、江戸時代の末期に、六百余の藩や郡村を再興し、「再建の神様」と呼ばれた二宮尊徳のとなえた「分度杯」の考えがきわめてウエルネスの維持に大切でしょう。そして、この考えを起点にして、過労や暴飲暴食を避けるとともに、環境に優しい新たな生活様式や経済システムを構築していくことや健康に優しい新たな代替医療や自然医療を開発していくことが、今後の人の命や地球環境を守っていく上で肝要であると考えています。

 

 研究会の後は、由緒ある歴史的な「銭がめ」という金沢市郊外にある老舗旅館で、研究会の軸になる先生方とともに語らう時間をもつことができ、とても健康的かつ建設的な時間を共有することができました。企画・実行に当たられた金沢医科大学の北本福美先生や東北大学の市江雅芳先生はじめ、多くの諸先生と同志の皆さんに心から感謝しています。そして、明日のウエルネスを真剣に考える同志の皆さんがいつまでも健康であるように祈る休日でした。

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