強いディフェンスボディをつくろうを考えた一日

 この1ケ月間は、メキシコで発生した新型インフルエンザウイルスの感染症が大きな問題になりました。日本でも感染者が発生したため、大学でもマスクをかけて歩いている人を多く見かけました。人間の歴史は、微生物の感染症との戦いであると言っても過言ではありませんが、人間も生きものである以上、僕らを宿主として生存し増殖している微生物の種類は非常に多いのです。

 インフルエンザウイルスは、毎年のように、表面のあるヘムアグルチニン(H)とかノイラミニダーゼ(N)という構造に変異を引き起こすので、前年度に接種してできた特異抗体という免疫物質は変異したウイルスには反応できなくなり、再度、変異したウイルスのワクチンを接種して感染を防御しなければなりません。この意味で、新たなワクチンが生産されるまでの期間に、新型のウイルスが生じると、人工的に特異抗体をつくることはできないので、特異抗体以外の生体防御物質や免疫細胞で攻撃してもらう必要が出てきます。したがって、感染して発症する否かはこの部分がたいへん重要なポイントになると僕は考えています。

 

 通常、このウイルスは、飛沫伝染で人から人へと伝播していくので、空気中のウイルスを呼吸系に侵入しないように、マスクをかけたり、喉に付着したウイルスをうがいで洗い流し出したりして、体内への侵入を阻止する手段をとるのが一般的になっています。

 

 多くの予防手段がマスクの着用とうがいや手洗いの励行であると強調されていますが、僕はその予防手段に加えて、ウイルスを攻撃する自然免疫系を普段から向上させておくことが、発症するか否かを大きく左右すると思っています。特に、目や鼻、口、咽頭などの表面に分泌される涙、鼻汁、唾液などの分泌液の量とそこに含まれる免疫物質は、生体防御の最前線で機能しているため、日頃から、こうした最前線の防御因子の構築に配慮する生活スタイルが求められます。つまり、ウイルスが体内に侵入しやすい状態というのは、ドライアイやドライマウスのように分泌物が少なく、分泌物がバリヤーになれないドライな状態なのです。そして、このドライな状態というのは、現代人の働き過ぎや寝不足、あるいは精神的な不快ストレスによって、意志とは無関係に作動している自律神経の中で活動モードを引き起こす交感神経を過剰に働かせてしまう結果に生じるのです。

 

 つまり、現代社会人の働き過ぎと不眠、過剰なストレスは、交感神経を過敏にさせてアドレナリンを多く分泌させてしまいます。その結果、血行が悪くなると同時に、細胞の分泌能力を低下させて、肌や粘膜が乾燥してくるのです。この結果、ウイルスなどの病原体の侵入が容易になり、感染症にかかりやすくなるのです。こうして考えてくると、ウイルス感染症と現代人の生活習慣や生活状態とには、因果関係があると言えます。

 

 21世紀はウイルス感染症との戦いの世紀ともいわれています。とりわけ、電子顕微鏡でしか見ることのできない新型ウイルスの発生は、大きな問題です。でも、ウイルスも生きものである以上、弱点があります。敵は熱や紫外線、アルコールやエーテル、ホルマリンなどに弱い構造をしています。また、特異抗体が生じるまでの間、好中球やマクロファージなどの免疫細胞や分泌液中の抗ウイルス物質が撃退してくれます。感染しても発症しないようにするために、予防手段を講じることはもちろんですが、その上に、身体が冷えないように、また唾液や涙がきちんと分泌されるように、生活習慣を見直してほしいものです。そうすれば、万が一、新型ウイルスが体内に侵入しても、初期の免疫系がそれらを撃退してくれるものなのです。

 

 人間の第一線に構築される生体防御の力は、感染症に多大な影響を与えます。今日は、強いディフェンスボディをつくる意味を深く考えた1日でした。

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