僕の郷里の松本市では、毎年、この8月から9月にかけて、指揮者で著名な小澤征爾さん総監督の下、クラシック音楽の祭典であるサイトウ・キネン・フェスティバルが開催されます。本年度も8月17日から松本市の県民文化会館を中心にして、市内の音楽ホールで9月9日まで開催されています。
  このサイトウ・キネン・オーケストラの前身は、桐朋学園創立者の一人である斎藤秀雄先生の没後10年の記念音楽祭として、1984年9月に東京と大阪で開かれた「斎藤秀雄メモリアル・コンサート」であると言われています。斎藤先生のお弟子であった小澤征爾さんと秋山和慶さんを中心として、国の内外で活躍している斎藤先生の教え子たちが結集して編成された桐朋学園斎藤秀雄先生のメモリアル・オーケストラでもあります。松本市で開催される以前は、1987年に、このオーケストラはヨーロッパへのツアーを行い大成功を収めていますし、それ以後も、1989年から1991年まで毎年ヨーロッパやアメリカでコンサート・ツアーを行っていました。
   ところで、故郷の松本市がそのフェスティバルの開催地に決定されたのは、実は、私の亡き父が松本市の市長在職中のことでありました。1991年のある日、父は興奮して帰宅したことをよく覚えています。私と父がお酒を楽しみながら語らっている最中、父は「松本市がサイトウ・キネン・フェスティバルの会場になることが正式に決まったよ」、そして、「この音楽の祭典は、天皇陛下もご列席されるような国家行事に匹敵するイベントだよ」と話していたことを、昨日のことのように思い出すのです。
   当時、開催地をめぐっては、松本市と奈良市が候補に挙がっていたとのことですが、最終的には、モーツアルトの生誕地であるオーストリアのザルツブルグの気候に近いアルプスに囲まれた松本市が開催地として良いのではないか、という結論を小澤さんが下したとのことでした。その後、田園調布にある小澤征爾さんのご自宅に父と県知事が集まって、共同記者会見が行われ、1992年9月からの開催が発表されていました。
   加えて、松本市は、スズキ・メソードを確立された故・鈴木鎮一先生の故郷であり、音楽を通じて心豊かな人間を育てることを目的とする教育法を推進していることで知られています。鈴木先生は、20世紀の日本のヴァイオリニストであり、先生によって創始された才能教育研究会の活動は日本やアメリカなどで展開されています。才能教育研究会の公表によれば、生徒数は世界中に40万人強、日本国内でも1万人弱と言われています。
   この夏、スズキ・メソード・コンサートとサイトウ・キネン・フェスティバルで郷里の松本は音楽でいっぱいに満たされました。明日がいっぱいある将来を担う子ども達が、世界一流の音楽を目の当たりにして、大きな感動を得て、心豊かな人材として明日の日本を、いや世界を背負ってほしいと強く願うばかりでした。




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