5月の喜びと心配を振り返る

  長野県にアマニの農園を是非ともつくり、それを普及させたいという願いから、僕は昨年から松本市内田地区でアマニの栽培が可能かどうかの実験をしてきました。アマニは、一般的にはアマという植物の種子であり、その原産は地中海地方と言われています。人間がはじめて栽培した植物の一種でもあり、その茎の繊維は、古代エジプトのミイラを包む布として利用されていたようです。このことは、アマの繊維には抗菌性があり、腐敗を防ぐ成分が含まれていることを暗示していました。今日、アマの繊維はテーブルクロスやシーツなどのリネンとして活用されています。また、アマの種子であるアマニは西暦800年代頃から食用の油に利用されています。この油には、人間にとって必要な脂肪酸の1種であるαリノレン酸が豊富に含まれており、なんとゴマ油の約100倍以上も存在しています。この事実から、アマが動脈硬化やアレルギーなどの生活習慣病の予防には最高の植物になると考えてきました。

  加えて、アマニにはゴマのセサミンに相当するリグナンが多く含まれているので、抗酸化作用が強く、身体を活性酸素毒の被害から守ってくれます。そのリグナンは、女性ホルモンのエストロジェンに似た働きを示すので、乳ガンや卵巣ガンなどの女性のガンの予防にも適していると考えられています。

 

  さて、昨年はカナダ産のアマニを用いて、松本市でも栽培が可能かどうかを調べたのですが、今年はカナダ産が入手できなくなり、ニュージーランドから輸入したアマニを用いて実験を開始しました。今年も昨年同様に、実験農場を担当して下さる横山尚永さんのご協力の下、5月上旬に種蒔きをしたのです。実は今年は多くの農地所有者がアマニ栽培に協力してくださることになり、収穫が大いに期待されています。本当に有り難いことで、感謝の気持ちでいっぱいです。実は先週、蒔いた種が発芽したかどうかを観察するために、僕は内田地区のアマニ農場を訪問しました。たいへん嬉しいことに、小さな緑の芽が無事に太陽に向かって育っているのを確認できました。南半球から北半球にはるばるやってきたアマニが信州の地ではじめて無事に発芽したのです。喜びで心が躍る瞬間でした。

 
『ニュージーランド産アマニの発芽』

  一方、5月の信州は木々の若葉が美しく輝く季節です。北アルプスに目を向けると、ようやく雪解けが始まり、冬のあいだ雪に覆われていた山肌が姿を現してきます。昔の人々は、こうした雪形がなんに見えるかをあてっこして遊んだようです。蝶ケ岳や白馬岳は、蝶や白馬に似た雪形が出現する山であることは有名でしょう。僕はこうした光景を観察するために、実家に帰る途中、中学時代によく出かけた松本市郊外の東山地区を訪れます。今月も幸いなことに、黄金色に輝く樹木を偶然にも見ることができました。そして同時に、雪解けの始まった常念岳や横通岳を眼前に見ることができました。自然が与えてくれる神秘的な美の世界がそこにありました。心が洗われる新鮮な瞬間でした。

 
『黄金色に輝く新緑の美しさ』 『雪解けが始まった北アルプスの常念岳(左)と横通岳(右)』

  ところで、今年の5月は天候不順であり、暑い日と寒い日が交互にやってきました。はるばる遠くフィリッピンから戻ってきたツバメの数が例年以上に少ないばかりでなく、寒い日が続くために餌となる昆虫も極端に少なくなっていたようです。ツバメがこの環境にどう耐えていくのか、あるいはどう適応していくのかわかりませんが、本当に悲しい事実なのです。僕はツバメの生存を祈るばかりでした。一方、大好きな蝶も少なく、いつもなら5月に必ず姿を見せてくれるテングチョウやスジボソヤマキチョウ、ルリシジミやコミスジなどもほとんど見ることができませんでした。本当に生命の存続が心配になります。急激な地球環境の変化は普通種の生存まで脅かしているようでした。

 

  今日は5月に感じた喜びと心配について考える1日になりました。

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